三つ子の魔法使い その9

剣と魔法

正しいのか間違っているのか。答えは誰にも分からないけど。
絶対に屈したくない感情に動かされる。


どどどーんっ!!ぐわぁぁぁっ!!ギャッギャッ!!

ものすごい声と、地下水路の洞穴を揺るがす衝撃音。

大人に変化した闇のフクロウは、闇の怪物を蹴り飛ばし、その隙に、足で掴んでいたニナを離しました。
ニナは大急ぎで、戦いの場から離れ、岩陰に隠れます。

そのとき、  「わぁぁぁぁぁーっ」と、 上から声が・・。

何かが、いや、誰かが上から落ちてきます。
「?誰?」ニナは、暗いので目を細めて上を見ました。

落ちてくるのは、二人の戦士。
地面に叩きつけられるかという時、一瞬フワッと浮き、
その後、ドサッと落ちました。

「レト!魔法の勉強もしろよ!なんちゅう落とし方だ!」

頭上に拳を上げ、叫んだのはドランでした。

「ゴーラ!ドラン!」  ニナが駆け寄ります。  「おー。魔女さま、ご無事で」  ゴーラが手を振りました。

「ニナ、ルカも消えたんだ!レトが追ってる!」 ドランが叫びました。
「なんですってっ」ニナは目を丸くしました。

「城主を抑えるから、水路に戻ってくれって。ルカは壁に飛び込んでさ、吸い込まれるように消えたんだ」
「レトはレトで、ニナを頼むってさ。一人で行っちまったぞ。無茶だよまったく。」

ニナは、漠然とした不安が現実のものになりつつある事を感じていました。

壁や地面を抜けていく。ルカの体内は、そこまで闇人に近づいていたのだと理解しました。
一人で切り込んでいった長兄の身も心配です。

「マルちゃんっ!」 ニナの叫びに、闇のフクロウは、のたうつ相手を足で押さえつけたまま、振り返りました。
「闇の城主のところまで乗せて!」


「ニナ、無茶だ!こいつはもう、大人になってる闇鳥だぞ!」ドランは抗議しましたが、もう遅いです。

ギャッギャーと、フクロウの声。  「マルちゃん!落ち着いて飛んで!」 ニナが叫びます。
水路の天井からは闇のコウモリだの例の毒クモだの、総動員で襲ってくるので、振り払いながら飛びます。

「白魔法の気をあちこちに感じる。ルカ兄が言っていたわ。もともとは、ここは、白の魔法の領域だって。」
ニナは、一生懸命考えました。

「だとしたら・・闇の呪文で白魔法を封印しているとしたら、儀式の間が一番白の魔法域に近いはず!」

こちらはレト。

仲間を信じて、水路に落とされた妹を任せ、
壁に飛び込んで消えた弟を追っています。

そこまで闇人に変化していれば、もう元には戻れないでしょう。
と、なると・・。
ルカの考えている事は分かります。レトは焦りました。

ニナとルカほどの強い繋がりはありませんが、そこは三つ子。
このくらい近ければ、レトにもルカの気配は分かります。

魔力の血を頼りに、迷路のような闇の城内を走りました。

内部に入り込むほど、行く手を阻む闇人も手強くなります。

回廊を抜けると、見上げるほどの大きな黒い扉があり、レトは止まりました。

扉の向こうに、目指す場所があるのが分かります。扉は、鈍い音をたて、ゆっくり開きました。
そこは、驚くほどの高い天井。

闇の暗さは変わらないものの、あまりの広い空間に、視野が追いつかず、目をみはり、回りを見渡しました。
広間の奥。数人の闇の兵士が立ち、レトを見ても騒ぐ様子もなく、静かに剣を抜きました。

「急ぐんだ。邪魔するな。」誰にも見せた事のないような険しい顔で、レトは剣を構えました。



絶対負けたくない。絶対あきらめたくない。
信じる強さが、潜んでいる血の力を呼び起こす。



「ニナ、コナイ。ニナ、キライ。ニナ、ホシイ。」
小さな闇の城主の、呪文のように繰り返す言葉に、ルカは苦笑しました。

「気持ちは分かるけどね。こっちも色々と都合があるしね。」

その言葉を聞くと、闇の少女の目は、ゆっくりと、ルカに向けられました。

「壁を抜けるところなんか見せたくなかったんだぞ。おまえがニナを落としたりするからだ。」
ルカの右手が上がります。 「その鏡だ。」

闇の城主の赤い目が、光ります。「壊シタラ、オマエモ、消エルヨ」

ルカは、少し笑いました。  「知ってるよ」

ルカの手から閃光が走り、闇の城主の背後の鏡を襲います。

闇の少女は、両手を広げ、その閃光を弾き飛ばしました。
大きな音とともに、跳ねた閃光が爆発します。

「裏切リ者!」闇の少女が叫びます。

「たしかに同類だからね。一緒に消えてやるよ。」
ルカは両手で呪文字を切り、空気の刃を飛ばします。

飛ばした刃は、はじけるように分散し、闇を切り裂きながら、鏡を狙いました。

城主も黙ってはいません。燃えるような赤い目を燻らせ、その体から黒い闇の帯が飛び出しました。
蛇のように襲い掛かる闇の帯。

ルカは、とっさに身を縮め、闇の帯を交わし、気の刃を繰り出し帯を切り裂きます。

ルカの攻撃は、ゆるむことなく、鏡の部屋は轟音と閃光で震え、柱や天井が、ガラガラと音をたてて崩れます。
城主が攻撃を避け、鏡の無防備な姿が見えました。

ルカが鏡を壊そうと、手を上げたそのとき、

どんっ! と、ものすごい音がして、後方の扉が弾かれたように壊れて飛んできました。
扉と一緒に飛んできたのは、闇の戦士が一人。

それを、追って飛び込んできたのは、三つ子の長兄レトでした。

 「レト兄!?」 ルカは、仰天しました。


レトは、それには答えず、弾かれたように起き上がって向かってくる闇の戦士に剣を振り下ろします。
今度は叩き付け合う剣の音が、響きます。

「ルカっ!ニナが来るまで待て!早まるなっ!」

ルカが、ハッと我に返り、鏡を見たとき、闇の城主は鏡の前に戻り、なにやら呪文を唱えていました。
「しまった!レト兄!危ない!闇呪かけられる!」 激しい剣と剣の戦いは止まりません。


やっぱり壊してしまおうと、ルカが手を上げると、今度は、鏡に向かっていた城主が驚いて呪文を止めました。

どうしたのかと見ると、鏡に闇の森の様子が映っています。
闇の森が白く光り、馬に乗った大勢の兵士。銀の縁取りの白い旗印の軍が闇の城を攻撃していました。

「王軍?!」ルカが叫びます。
闇呪が解けてから来るよう言ってたのですが、王様だって皆が心配だったのです。

どーんっ
という爆発音。ぎんっ!とぶつかる剣の鈍い音。

「レト兄!レト兄!」 ルカが叫びます。「鏡に映ったら大変だっていうのにもう!レト兄ってばっ!」

ルカは気が気ではありませんでした。逃げて欲しかったのですが、決着つくまで止める長兄ではありません。

城主が鏡に向かって呪文を唱えないように、攻撃するだけで、精一杯です。
レトの腕から血が流れているのも見えて、ルカは焦りました。

闇の剣士が渾身の力を込めて、一気に剣を振り下ろした、その時、
レトは、体を一気に沈め、剣を振り切りました。

「レト兄!」ルカは思わず叫びます。

剣の音が止み、一瞬の静寂。 闇の体は、黒い炭が崩れるように消えました。

「レト兄!」ルカは駆け寄りましたが、「おまえっ!あとで殴るからな!!」と言われ、回れ右して逃げました。


闇の城主の目は、血のように赤く揺らぎ、恨みと怒りで燃えるようでした。

そのときです!

地震のように、床が激しく揺れ始め、レトもルカも、ひっくり返りました。

城主が、驚きの表情を見せる中、目の前の床が ごごごごご・・と盛り上がり、どごっと割れ、

飛び出してきたのは、巨大な闇のフクロウでした。

ギャッギャ!と、声を上げるフクロウの背中から、あたふたしながら降りてきたのは金の髪。

「ニナ!」 レトとルカが同時に叫びました。

ニナは、ホコリだらけになった服を、パタパタはたきながら回りを見ました。
かなり、ヨロヨロしていましたが、小さな闇人を見つけると、顔をキッと上げました。


「待たせたわね!お望みどうり来たわよっ!」





                                           



                                     もう少しカッコよく登場させたかったのですが
                                     ニナは初めての実戦と思うと
                                     どうにも、オタオタになってしまいます。

                                                  次回、完結。



                                                    
おまけの漫画  ルカの闇の城案内