三つ子の魔法使い その5

白の魔法書


恐さを知るのも、とても大切な事だけど、
きっと、世界はうまくいくと、疑わない心も大切かもしれないね。
小さな魔女さん、頑張って。


国を出た三つ子たちは、まず、山向こうの国に住む、魔法使いを尋ねる事にしていました。ところが、
山越えの最中、魔物に襲われたのです。闇の城が自らを封印した為、闇の魔物が野生化していました。

ニナも応戦しようとしましたが、ルカが、シロフクロウに巨大化を命じ、ニナをくわえさせ飛ばしました。
魔物に苦戦する兄たちではないと分っていますが、ニナは怒っていました。いつもこんな風です。

「もしかして。兄さんたち、考え方古くない?女は心配しながら待つものだと思ってない?」
ニナは、腕の中に小さくおさまっているフクロウに溜息混じりに、話しかけました。


たくさんの人で賑わう、街中の市場に近い公園。

はぐれたら、ここと決めた場所で、
ニナは、レトとルカを、待っていました。

その時、女の人の悲鳴があがり、
ニナは飛び上がりました。
フクロウを抱え、声の聞こえた方に走ります。

市場の外れから、悲鳴と叫び声が上がります。
ニナは、逃げてくる人たちを掻き分けながら、
騒ぎの中心へ走っていきました。

山沿いの泉の場所に、黒い物体。
闇の森の魔物です!
「どうして、こんな街中に!?」ニナは驚きました。


巨大なクマの、手足を異常に伸ばしたような姿の体。口は耳まで裂け、剣のような牙をむき出し、
その目の前に、転んで逃げ遅れた女の子が泣いていました。


「マルちゃん!巨大化しないでよね。事が面倒になるからっ!」
フクロウにそう言うと、ニナは、呪文をとなえ、両手を交差させ、呪文字を描きはじめました。

二ナの体が、ぼんやりと、光りはじめ、叫んだ言葉と同時に、光の矢が一気に飛び出しました。
唸る魔物の額に当たり、魔物は、はじき飛ばされました。


魔物が、もんどりうって、もがく間に、ニナは女の子を抱え起こし後ろに庇い、次発を構えました。
これ以上やったら、もっと暴れ、最悪、仲間を呼ばれるかもしれません。できれば使いたくありません。

幸いな事に、魔物は、今の一撃で、二ナの魔法力を理解し、体をひるがえし、山に逃げました。


そのとき、手に手に武器を持って、街の人たちが走ってきました。ニナは慌てて立ち去ろうとしましたが、
見ていた回りの人たち、特に女の子の母親が、はなしませんでした。

「この子が、追い払ってくれたわ!まぁ、なんて可愛い魔女さんでしょう。」
「お礼をしなくてはいけないわ。」
「ささっ。家に来てください。娘の命の恩人ですわ!」

ニナを囲んで口々に言います。ニナは、おば様たちに抱えられるようにして連れて行かれました。

「兄さんたちと、待ち合わせしてるんですーっ!」
「大丈夫よ。お兄さんたちが来たら、連れてきてあげるわ」と、おば様たち。

くれぐれも、騒ぎは避けるようにと、長兄から言われた事を思い出し、ニナは青くなりました。
「レト兄に、おこられる〜〜。」

助けた女の子の家で、ニナがお世話になっていると、そこへ村の女の人が知らせに来てくれました。

「魔女さま、来たわ、来たわ。あなたのお兄さん方。
すぐに分ったわ。魔女様が言うとうり、青銅色の髪と、銀の髪。この辺りじゃ珍しいもの。」

「よかった。ありがとうございます。すぐ行きます。」ニナが言うと、女の人は止めました。
「それがね、いきさつを話したら、丁度いいから、もう少し、妹を預かってて下さいって。」
「なんですってー!!」
「西の湖の魔法使いのところへ行くから、夕方むかえに・・・って。魔女様!」

脱兎のごとく、外へ飛び出したニナは、「西ってどっち!!」と叫びました。



旅の目的を思ったら、気楽な事は言えないけれど、
闇の中にいた弟が、木漏れ日の小道を笑顔で歩く。箱入り娘の妹が、嬉しそうに旅をする。
いちばん嬉しいのは、お兄ちゃんかもしれないね。



「知らないぞ〜。絶対、ニナ追っかけてくるから。」西の湖に向かう小道を歩きながら、ルカが言いました。
「せっかく街の人と仲良くなれたんだから、もったいないじゃないか。」と、レトは笑いました。

「そうだな〜ニナはずっと箱入りで・・・レト兄。」 気配を感じ、ルカが止まりました。

「うん。何か来る。」 レトは剣を抜きました。「ルカ、闇の魔法は使うなよ。」
「なるべく・・と、付け加えてよね。レト兄ほど剣士向きじゃないんで。」ルカも、剣を抜きました。

それは、すぐに襲ってきました。

西の空から、黒い鳥の群れが、ギャギャギャ!
と叫びながら覆いかぶさってきました。

「ガーゴイルにしては小さい!初めて見るぞ、
ルカ、この鳥、見たことあるか?。」
襲ってきた一匹目をなぎ払いながら
レトが言いました。

「オレも見たことない!
考えたら、オレも闇の箱入りだったりして。」
ルカも、黒い鳥を払いながら叫びました。

群れの数は、ざっと見て4、50羽。
ちょっとキツイですが、二人いれば充分でした。

戦いは、しばらく続きましたが、
半分ほど、仲間を落とされたところで、
闇鳥は、襲撃をあきらめ、飛び去りました。

レトと、ルカは、大急ぎで、西の湖に向かって走りました。湖の魔女が心配だったのです。
小道を抜け、緩やかな丘を下ると、小さな森があり、湖が見えてきました。

湖のほとりにあるはずの、魔女の家が。土煙を残して、瓦礫の山になっていました。
レトと、ルカは、青くなりました。


「魔女さま!」レトは呼んでみましたが、たちこめる土煙の中、返事はありません。
「レト兄、魔女さま、瓦礫の下にいるかもしれない。」

レトと、ルカは、魔女を呼びながら、壊れた屋根やレンガをどかして探しました。すると、小さな声が・・。
「・・・・だ・・・・ここ・・・・ここ・・・・」

「わーっ!魔女さま!しっかり!」
二人は気色ばんで、瓦礫や柱をどかし、何やら扉のような板を見つけ、持ち上げました。

「げほっ!げほっ!」
開けた扉の下から、真っ白い髪の婆さま・・(失礼)魔女さまが出てきました。
「大丈夫ですか。おケガは?!」レトとルカは、婆さま、もとい魔女さまを抱えるように救い出しました。


「やれやれ。ひどい目にあった。なんじゃ、あの黒い鳥は。」と、魔女は言いました。
やはり、あの黒い鳥に襲われたようです。

「ひさしぶりだね、レト。おやおや、おまえはルカだね。帰ってこれたとは、よかったよかった。」
湖の魔女は、ほこりだらけになった服を、パタパタはたきながら言いました。

「国王からの手紙はもらってるよ。伝説の白魔法の書が欲しいんじゃろ」

レトとルカは、顔を見合わせました。それはそうなのですが、
今は、この状態、それどころではないでしょう。

「気にする事はない。私のもっている魔法書が、役にたつかどうかは分らんが、まぁ見てみることだね。」
「でも、魔女さま、家が・・」ルカが気の毒そうに言いましたが、魔女は笑いました。

「見くびるんじゃないよ。目立つ家に、大事なものは置かないよ。」






                                              





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