三つ子の魔法使い その4

闇の侵食


人は弱いから、誰の心にも闇はある。
悩まなくていいよ。闇を持つから、光の温かさがわかるもの。



ニナは夢を見ていました。

ルカが、人質として闇の城に入った日。

与えられた部屋でルカが荷物を広げていると、
背後に気配がするのです。振り返ってみますと、
小さな闇人が立っていたので、仰天しました。

小さな闇人は、やがて、ヨロヨロと後ろへ下がり、
しゃがみこんで、しくしく泣き出しました。

「女ノ子ッテイッタ・・女ノ子クルッテイッタノニ・・・」
そう呟きながら、小さな闇人は
壁に吸い込まれるように消えていきました。

「そりゃわるかったね」と、ルカが呟きました。

確かに、闇国が求めたのは、ニナでしたから。


「ルカ兄・・」手を伸ばすと、はっと目が覚めました。  「あれ?」 ニナの目に、見慣れない天井が映ります。


「魔女さま、気がつかれました?」声の方に目をやると、お城の官女さんがいました。
ニナは、少しだるい体を起こし、キョロキョロと回りをみます。ニナ達の家ではありません。

「ここは、お城じゃないの。どうしてここに?レト兄は?ルカ兄は?」
ニナは、ベットから飛び起き、部屋から出ようとしました。


「お、お待ちくださいっ魔女さまっ!」官女さんの言葉も聞かず、ニナは廊下に飛び出しました。
飛び出したところで、護衛の兵士たちに止められます。
「放しなさい!はじきとばすわよ!」  小さくても、魔女です。兵士たちは、おもわず後ずさりました。

「ぶっそうな魔女さんだな〜」 のんきな声に振り向くと、戦装束を解いた、ゴーラがいました。

「・・・・兄さんたちは?」二ナの心配そうな声に、ゴーラは苦笑しました。
「まだ、森にいるよ。」

官女さんが来て、ニナを部屋に戻し
温かい飲み物を持たせました。

「ルカ兄、ひどいことになってるの?」恐る恐る聞きます。

「レトが詳しく知ってる。王様に報告してたからね。」
と、ゴーラが言います。

まただ。と、ニナは思いました。2年前と同じです。
ニナだけ何も知らないまま、事が進みます。


「私、夢をみたの。ルカ兄の記憶が混ざってたわ。
あの闇人・・あの子から感じたものは闇だけじゃない。」

あの子って誰だ?とゴーラは思いましたが、
ニナが何か考えている様子なので黙っていました。


ニナは、官女さんやお城の人に、とっても失礼をしたと気がつき、恥ずかしくなりました。
「あの〜。ごめんなさい・・。」

「とりあえず、それ飲んで。興奮した魔女さんは恐いからね。」ゴーラは笑います。

「私、王様に、お会いしたい。」と、ニナはゴーラに言いました。
「王様に?そりゃ、ニナは今回の功労者だ。喜んでお会いになるとは思うけど。」


問題は、山積み。謎解きは、迷路の向こう。
でも、心が高揚するのは何故?
三つ子の魔法使い、自分たちの力を信じて歩き出す。


レトと、ルカは、森の戦陣のテントにいました。

ひとまず戦いは終わったとはいえ油断はできません。

交代で見張りをたて、闇の城の監視が続いています。
国に入れないルカを置いておくには好都合でした。

見張り台にいるドランが、上からレトを呼びました。
「馬だ。ゴーラの後ろに魔女さんが乗ってるぞ。」


レトは少し困った顔をして、頭を掻きました。
ドランの声を聞いて、ルカもテントから顔を出しました。

「レト兄、ニナ、おとなしく残ると思う?」
「無理だろうな」

そう言いながら、レトは、
馬から降りた妹に、こちらに来るよう手招きをしました。


「ごめんな、無茶させたね。」と、謝るルカに、ニナは首をふりました。
ニナはテントの隅に、地図が広げられ、旅道具が置かれているのを見ました。
「国を出るのね・・。」

「王様と、話したのか?」と、レトが聞きました。
「うん。でも、王様には確かめただけ。国を脅かす闇呪がルカにかかってるって、私にだって分かる。」


それは、伝説の闇の呪でした。

闇人は、どこから来るのかは未だに謎だらけですが、人間が闇人に取り込まれ変化する昔話や、
街ごと、村ごと、闇に包まれ、闇の国に取り込まれた伝説は、あちこちにありました。

これは残酷な闇呪です。時がくれば、ルカの体を媒体にして、国中が闇に取り込まれるでしょう。


闇の国の計画の誤算は、ルカがそれを逆手に取ったことでした。
ルカは、自分にかけられた闇呪を押さえるために、その呪気を利用して、闇魔法を習得したのです。


いつまで、押さえられるかは分りませんが、今のところ正気です。
ルカが困ったように肩をすくめました。
「いや〜。さすがに闇国を出るのはヤバイと思ったんだけど、あの時は説明する暇もなかったし。」

「説明って。闇国に残るつもりだったの?」
「言わない。レト兄に言ったら殴られそうになった。」と、ルカは笑います。


ニナは、夢で見た、小さな闇人を思い出しました。
あの子は、きっと、闇に侵食された人々の中にいたのだと思いました。
ルカは、闇の国に取り込まれた人々を、たくさん見たのでしょう。その恐ろしさを目の当たりにしたのです。

でも、事実が分ると、希望も出てきました。

闇の呪の伝説が本当だったのだから、それに対抗した白魔法の伝説も信憑性が出てきたのです。
この方法を探し、闇の国の謎を探るのです。


同じ血を持ち、同時に生まれてきた三つ子の兄妹。

一人は、思慮と、力を持つ者。  
一人は、人格を留めながら、闇の謎に近づいた者。
そして、闇の力を消し去る事ができる白の魔法力と揺るがない意志を持つ者。

もしかしたら、闇の侵食を防ぐために、ニナたちは、生まれてきたのかもしれません。


「ニナ」
「残らないわよ」

長兄の言葉に即答でした。

レトは苦笑しました。  「そうだね。ニナが必要だ。わかってるよ。」




                                                




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