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桃太郎(鬼が島上陸)
「かっこわる〜〜〜。」
ゆれる船の縁に脱力したようにつかまって、猿が言う。
呆気にとられた、漁師村の人たちが見送る中、船出したのだが、
雉が、すぐに、買出しに戻るように言い出したのだ。
言われた時は、犬だって、面食らった。
けっこう・・心の準備というか、覚悟もしていたところなので、今更・・なぁ・・。
雉は、三人の(匹)様子を見て、ぷるぷると口の端に皺をよせる。
「おまえたち・・・なんの準備もなしで・・行くつもりだったのかぁ・・?・・。」
肩が、怒りと呆れで、小刻みに震えているので・・
もう一言何か言うと、雉がヒステリーを起こしそうだったので、
あわてて、方向を変えて、違う浜辺を探し、舟を漕いだ。
さすがに、さっき出発したところへは戻れないのは、雉も承知した。
猿は舟に留守番。
食料やら、布やら、縄、紐、あれこれ・・。
雉は犬の背中に陣取って、桃太郎に指示を出す。
時々、品物が見えないといって、犬の頭にピョンと載る。
「こいつ・・いつか噛み付いてやる」・・・犬は思う。
鬼が島は、それほど遠くはないと聞いていた。
それでも、潮に乗って丸一日。やっと、遠くに島の影がみえてきた。
莚(ムシロ)をかぶり舟底にはりついて、波に任せて近づく。
「あ、なにか、ぶら下がってるぞ。」猿が莚から、少し頭を出して、指差す
鬼が島は断崖絶壁で囲まれているが、。
よくみると、たしかに、何本か縄ばしごがあり、波打ち際まで届いている。
「こっちは危険ということだね。裏に回り込もう。」
桃太郎はそういうと、あらためて、三匹を見た。
「なにも言うなよ。」 犬が桃太郎の言葉をとめる。
ここまで来たら、もう自分の責任。 ついてきたのは、自分達の意思。
「うん。」桃太郎も頷く。
人気のない岸壁に舟をつける。
上からは見えないところ、岩の間から出た、松の枝に舟を繋ぐ。
様子を見てきた雉が戻ってきた。舟に降りると縄を咥えた。
「はい」。そう言って、猿の手に縄を渡す。
猿は、けっ・・っと呟くと、縄を口にくわえて、岸壁を軽々と登り上がる。
縄を適当な松の木に結びつけ、片方を垂らす。
岸壁を、綱を頼りに登る。
犬が大変だった。
猿と桃太郎が、ふたりがかりで、押したり、持ち上げたりで、なんとか登った。
「何かに包んで、縄で引っ張り上げた方がよかったのに。」
と、雉が言った。
「オレは、荷物かっ!」 犬が、ゼイゼイ言いながら睨む。
(こいつ、絶対、噛み付いてやる)
「太郎、大丈夫?痛いところはないか?」 と、桃太郎が犬の顔を覗く。
(誰が、いつから太郎になったんだ)
犬は思ったが、しゃべるのも苦しい。
どうせ、雉が三郎だったからだろ・・。猿は差し詰め次郎か。
「次郎、ありがとう。おまえは凄いね。」と、桃太郎が猿を誉める。
(やっぱり・・・)犬は脱力して、へたり込む。
「まずは、鬼たちの様子が知りたい。三郎、頼む。」
桃太郎の言葉に雉が頷く。
「あんまり近づくなよ。雉鍋にされても知らないからな。」
憎まれ口を叩く、猿の頭を、ムギュッと、踏み台にして、空に舞い上がる。
激しく岩を打つ、波の音が、うるさいほど響く。
人を、頑なに寄せ付けない絶壁の孤島。
鬼退治が始まる。
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