四枚羽の鳥



とても、きれいな鳥を見つけた。

真っ白い羽根が、美しいなと思って見ていると、
その鳥は、いきなり、目の前に降りてきた。

降りてきた。というより、落ちてきた。に近い様だった。
(ニワトリみたいな飛びかただな)と、思った。

「どうせ、逃げられないんだ。やるなら、やれよ。」
と、いきなり、白い鳥が言った。

言われてみれば、オレは弓を手にしていた。
なんだ、射られると思ったんだ。

「今日は、うさぎも捕ったし、もう帰るよ。」
そう言うと、鳥はキョトンとして、首をかしげた。

のたのたと、歩いて、木の幹を、よいしょよいしょと、登っていく姿は、インコみたいだな・・と思った。

父さんも、爺さんも、この森で猟師をやってきたけど、こんな鳥の話は聞いた事がない。

「珍しい鳥だね。」そういうと、鳥は不機嫌そうに、そっぽを向いた。
「へんな鳥だって、言いたいんだろう。まともに飛べないから、エサを取るのだって大変なんだ。」

「飼いたくなったけど、だめかな・・」
「いやだ。」
間髪いれず即答されたので、笑ってしまった。この鳥、気に入った。


「どうして、きれいな羽根があるのに飛べないのかな。ちょっと、みせてごらん。」
逃げるかと思ったが、意外に素直に羽をみせてくれた。

あれ?

「分かっただろ、うまく飛べないんだよ。」  普通の羽の下に、もう一対、小さめの羽があった。
「4枚羽。これは凄い。広げたら、美しいだろうなあ・・。」

感心したように呟くと、鳥は、また、首をかしげた。   「おまえ、変わってるな」
「誉めてくれると、悪い気はしないけど・・生きていくには困ってるんだぞ。」

たしかにそうだろうな・・。生きていくには困ったものかもしれない・・。
この、美しい鳥は、近いうちに、森で悲惨な最後を迎えるだろう。これは、もったいないと思った。


「きれいなだけってものも、悪くはないと思うけどな。」
そういうと、鳥は、また、そっぽをむいた。

「観賞用に人間に飼われるのが嫌でなければ、大事にしてもらえると思うけどな。
興味を持ちそうで、大事に飼ってくれそうな貴族に心当たりもあるし・・。」

そういうと、目に見えて警戒された。  今度は、生け捕りを心配したらしい。

「生き物の命で生活してるオレが言うのもなんだけどさ、命に執着しても悪くはないと思うよ。」
「籠の中で、一生飼い殺しになれというのか。」
「生き方は自由だと思うよ。投げやりは良くないって言ってんだよ。」


鳥は、しばらく考えていたようだったが、いきなり叫んだ。
「よし・・おれは、飛ぶぞ!」

「へ?・・」 予想外の答えだった。ついてくるかと思ったのに・・・。

「そうだ。飛べないものと、ひがんでいた。努力もしなかった。ありがとう、猟師の子。目がさめた。」
「あの〜。もしもし?」

目をきらきらさせて、4枚羽の白い鳥は、希望に燃えていた。
きっと彼は、明日から、飛ぶための猛特訓を始める事だろう。


オレは、この鳥を献上するのは、あきらめた。心の隅にあった自分の打算にも気がついて恥ずかしくなった。
もう一度、羽を触って、よく見せてもらう。

「まずは、上の二枚羽だけで、練習してみよう。4枚動かすより効率がいいかもしれない。」
「協力してくれるのか」
「飛べるようになったら、気をつけろよ。オレは猟師だからな。」

鳥が笑った。

4枚羽を広げて、この森の空を、自由に飛ぶ姿は、
さぞ、美しいだろうと、想像した。






                                 

                      なせばなる・・って人事のように・・(^^ゞ
                             自由や生きることに執着する人って尊敬するのです。

                        鳥が普通にしゃべっている事は気にしない気にしない。